秋は“実りの季節”、“食欲の秋”といわれるように、野菜やフルーツ、きのこ類、魚介類など、この時期にしか食べることができない旬の味覚が目白押しです。
世界的に見ても秋は収穫のとき。とれたての新鮮な野菜やフルーツを使ったものなど、秋に食べたくなる、おいしいお菓子を紹介します。
ヨーロッパの伝統菓子、モンブラン
秋の実りの代表格、「栗」。縄文時代には日本人の主食のひとつとされ、古くから栗きんとんや甘栗などのお菓子として親しまれてきましたが、実は、ヨーロッパでも愛されている食材なのです。
そんな栗を使ったスイーツといえば「モンブラン」でしょう。もともとは南フランスの家庭菓子が原型のこのケーキは、こんもりと盛ったマロンクリームと、その上に振りかけた粉砂糖がまるでアルプス山脈に連なる山「モンブラン」のようだと評されました。
しかし、どうしてあの細い紐のようなクリーム状になったのでしょうか。その答えは、モンブランと同様、ヨーロッパで人気のお菓子マロングラッセにありました。
マロングラッセは、熱したシロップに栗を長時間浸して作るお菓子ですが、長時間煮ることでどうしても形が崩れてしまうものが出てきます。こうして煮崩れてしまったものは、マロングラッセとして売ることはできません。
しかし、この煮崩れした栗をパティシエたちは集めて、生クリームを混ぜ、マロンペーストを作ったのです。柔らかいマロンペーストを細く絞り出し、ふわっと盛ることで、見た目にも美しい現在のモンブランが誕生したといわれています。
元祖ザッハトルテ
同じく、秋から冬にかけて食べたいのがオーストリア、ウィーンのザッハトルテ。チョコレートケーキの王様とも呼ばれるケーキです。
このシーズンになぜ、チョコレートケーキが食べたくなるのかというと、気温や湿度が大きく関係しています。チョコレートというのは常温で溶けやすく、とても濃厚なため、夏場よりも秋から冬にかけての方がじっくりと味わうことができます。
ウィーンには「元祖」や「正統」と呼ばれるザッハトルテの店が、数多くあります。その味は、中にアプリコットのジャムがサンドされたものや、甘さの少ない生クリームを添えたものなどさまざまです。
ザッハトルテの表面は美しい光沢で覆われています。これはショコラーデン・グラズールというチョコレートのアイシングで、美しく仕上げるのには高い技術が必要です。
町中がりんごでいっぱいに!?
日本でもなじみ深い秋の果物、りんごが有名なアメリカの町、ジュリアン。人口1500人前後のカルフォルニア州の小さな田舎町に、毎年秋になるとアメリカ全土から、名物のアップルパイを求めて観光客が押し寄せるといいます。
町ではりんご狩りが行われ、アップルパイの店には焼きたて目当ての長い行列ができるほどのにぎわい。炒めたりんごにシナモンを振りかけ、パイ生地で包みこんだスタンダードなお菓子タイプから、芯をくりぬいた丸ごとのりんごを包んだ小さなタイプ、クラムと呼ばれるバターと砂糖のそぼろをかけて焼いたクラムアップルパイまで、さまざまなアップルパイを町中の店で楽しむことができます。
カウボーイが出てきそうな素朴な町で、人気のアップルパイを楽しんでみてはどうでしょうか。
新ワインと玉ねぎのケーキ
最後に紹介するのはドイツの「ツヴィーベルクーヘン」。ツヴィーベルとはドイツ語で玉ねぎ、クーヘンとはケーキのこと。つまりは「玉ねぎケーキ」です。
この玉ねぎケーキはドイツでも特に、ワインが多く作られている地方を中心に食べられ、秋の新ワインとともに楽しまれています。
ただし、ケーキといっても甘いものではなく、じっくり炒めた玉ねぎとベーコンを玉子のソースとともに生地の中に詰めて焼いたもので、お菓子というよりはキッシュに近い感覚でしょう。
暖かいままでも冷めてもおいしくいただけ、冷えたフレッシュなワインにとても合うケーキです。
豊穣の実りをスイーツに
秋に食べたい世界のお菓子、お気に入りは見つかりましたか?
秋はおいしいものがあふれる季節。マロングラッセやスイートポテト、柿や洋なしのコンポートなどの定番をはじめ、探せば探すほどさまざまな秋ならではのお菓子に出会えそうですね!
参考: