「水ようかん」は、その涼やかさで暑い夏の日を癒してくれる夏のデザートのイメージが一般的です。
お中元や、お盆の帰省時の定番アイテムでもある「水ようかん」。実は、本来は冬のデザートとして生まれたようです。
すっかり夏の風物詩となっている「水ようかん」が、今でも冬のデザートとして存在している地域もあります。あまり知られていない「水ようかん」の歴史をさかのぼってみましょう。
「水ようかん」の起源
ようかんを漢字で書くと「羊羹」となります。「羹」は「あつもの」で熱いスープを意味します。つまり、「羊羹」とは「羊のスープ」のことなのです。元々の「羊羹」は中国発祥のもので、鎌倉時代から室町時代にかけて、禅僧によって日本へ伝えられました。禅宗では肉が禁じられていたため、僧たちが羊のかわりに小豆を使い精進料理としてアレンジしたものが、現在の「ようかん」の原形なのです。ようかんのなかでも寒天の分量が少なく柔らかいものが「水ようかん」になりますが、その起源にも諸説あります。
江戸時代前に、お節料理のデザートとして食べるために考案されたという説があり、さらには、丁稚奉公(でっちぼうこう)に出ていた人が、帰郷の際に持ち帰った「丁稚ようかん」を家族で食べるために作り直したものが「水ようかん」の始まりというのが有力な説となっています。
福井では「水ようかん」は冬の風物詩
夏の風物詩として「水ようかん」がすっかり定着している昨今でも、「水ようかん」を冬のデザートとして食べている地域が存在します。冬の「水ようかん」で有名なのが、福井県です。寒い冬に、家族そろってこたつに入って「水ようかん」を食べるのが、福井では人々の楽しみのひとつだとか。
福井の「水ようかん」は他県のものと比べると、柔らかくみずみずしいのが特徴で、その分傷みやすいということもあり、気温の低い冬が旬の季節になったと言われています。福井県のほかにも、東日本の一部では今でも冬の「水ようかん」の風習が残っています。せまい日本でありながら、食べ物に見られる地域性は興味深いものですね。
冬の「水ようかん」を体験! 家庭で作る簡単レシピ
夏のものだとばかり思っていた「水ようかん」。その歴史を知ることで、冬に食べてみたくなったのではないでしょうか? そこで、季節問わず、食べたいときに家庭で簡単に作ることができる「水ようかん」レシピを紹介しましょう。
- 寒天を戻す:寒天7gをたっぷりの水に浸して一晩かけて戻します。
- 鍋で寒天を溶かす:戻した寒天と500gの水を鍋に入れ、中火で寒天を溶かします。
- 砂糖を煮溶かす:250gの砂糖を少しずつ加え、煮溶かします。ぐつぐつと十分に煮溶かすこと。
- こしあんを煮溶かす:500gのこしあんを鍋へ加え、煮溶かします。
- 型へ流し込む:とろみがついたら、型へ流し込みます。寒天は常温でも固まるので、固まり始める前に型へ流し込むように。
- 冷蔵庫で冷やしてできあがり!
プリン型を使えば、市販製品のような出来栄えになります。また、クッキー型を使ってみるのも楽しいでしょう。ただ、家庭で作った水ようかんは、日持ちがしませんので、風味が落ちる前にお早めにお召し上がりくださいね。
冬デザートの「水ようかん」
冬のようかんは、家族がそろって仲良く切り分けて食べる、団らんの象徴。年越し、年明けなど家族が集う場で、この昔ながらの風習を取り入れてみるのも風情があって良いものではないでしょうか。いつもの“こたつでアイス”をたまには、“こたつで水ようかん”にしてみませんか?
参考: